肩関節の疾患に対する治療について
肩腱板断裂について
肩甲骨と上腕骨をつなぐ筋肉で、外傷だけでなく変性という加齢に伴う変化でも断裂することがあります。腱板断裂があっても痛くない場合もあり、保存療法でしばらく様子をみることができる病態なのか、手術療法の方が良いのかを診察時の所見と画像所見で判断します。
肩腱板断裂に対する手術
腱板修復術は内視鏡で行っています。修復可能な症例においては triple-row法 という手法で修復しており、再断裂率が下がることを報告しています。腱板断裂が大きすぎて修復できない状況もあります。その場合は筋移行術や腱移植による上方関節包再建、リバース型人工肩関節置換術など様々な手法を用いて、それぞれに合わせた治療法を提供しています。
【 triple-row法 】
断裂腱を良い位置にしっかりと整復してから固定することで再断裂率が低くなりました。
肩関節不安定症について
肩関節不安定症には主に外傷による肩関節前方脱臼・亜脱臼と、もともとの体質による関節弛緩性が起因するものとあります。診察時の所見に加えて、画像診断でより詳細に病態を把握し、治療方針を一緒に相談します。外傷に起因するものに対しては各スポーツに合わせて保存療法で経過をみたりする場合もありますし、手術が必要な場合も様々な手法を用いてそれぞれのニーズに合わせた治療を行っています。体質による関節弛緩性が原因の場合は基本的にリハビリでの筋力強化、筋力バランスの改善で安定化を図ります。症状に合わせた多数のリハビリメニューを用意しており、リハビリスタッフが無理なくできるメニューを選んでくれます。リハビリ室でのリハビリも大切ですが、日々のセルフエクササイズも大切です。わかりやすくやりやすいメニュ
ーを用意しています。
肩関節不安定症に対する手術
それぞれのニーズにあわせ、 肩関節唇形成術 、 烏口突起移行術 、Remplissage法を行っています。全ての術式を基本的に内視鏡で手術を行っています。ただ神経や血管がとても近い場所になりますので危険性が高い場合には従来の直視下(3-5cmくらいの切開)での手術に切り替えることもあります。
【肩関節唇形成術 】
肩関節脱臼、肩関節不安定症の主な病態は肩関節の袋が破れてしまっていることです。これを関節鏡で修復しますが、当院では元来の幅の広い付着部を再現するように修復することで成績向上を果たしています。
骨折を伴う時は特に綺麗に修復することが可能です。
【烏口突起移行術】
若年・コリジョンスポーツ競技者・肩甲骨関節窩の骨欠損が大きな症例に対し、肩甲骨の烏口突起を移行する手術を行っています。①関節窩前方の骨再建、ならびに②烏口突起に付着している筋腱、の双方の効果により、高い関節制動性を発揮します。
変形性肩関節症について
加齢により肩甲骨と上腕骨の軟骨がすり減ってしまい痛みが出現する状態です。鎮痛剤の内服やリハビリでの筋力強化でも疼痛が緩和しない場合には手術適応となり、各種人工肩関節置換術(解剖学的人工肩関節(TSA)/ リバース型人工肩関節
RSA))を行っております。
投球障害肩・肘について
投球による肩や肘の障害はコンディショニング不良に起因することが多いです。肩や肘周りのタイトネス、筋力低下だけでなく、股関節・足関節・胸腰椎・肩甲骨の可動性や筋力を評価し、その改善に努めてもらいます。リハビリをしても治らない場合には手術を考慮しますが、それぞれの病態に合わせた治療法を選択しています。診断が難しい投球障害に対しても豊富な経験を生かしプロおよびアマチュアの選手に治療を行っていま
す。
肩インピンジメント症候群、五十肩(凍結肩)について
肩インピンジメント症候群は肩甲骨と上腕骨の間で腱板が押されて、炎症を起こして腱板が荒れてしまうために余計に押されやすくなって動かした時に痛くなる病態です。五十肩(凍結肩)は軽微な外傷など何らかにより肩甲骨と上腕骨をとりまく肩関節の袋に炎症が強く起こってしまい、関節の袋がとても硬くなってしまうために動きにくくなる病態です。ともに炎症が原因ですので、超音波検査装置(エコー)を用いて適切な場所に炎症止めの注射をすることで改善を図ります。適切な注射や運動などの保存療法でも改善しない場合や再発する場合には手術を行うこともあります