血液がん(血液腫瘍)

血液がん(血液腫瘍)について

血液のがん(血液腫瘍)には、たくさんの種類の病気が含まれています。代表的なものとしては、白血病(急性や慢性のタイプ)、悪性リンパ腫(ホジキンリンパ腫や非ホジキンリンパ腫)、多発性骨髄腫たはつせいこつずいしゅ骨髄増殖性腫瘍こつずいぞうしょくせいしゅよう骨髄異形成症候群こつずいいけいせいしょうこうぐんなどがあります。

これらの病気は、血液や骨髄、リンパ節などにできるがんで、それぞれに特徴や治療法が異なります。最近では、分子標的薬や抗体薬といった新しいタイプの薬が使われるようになり、従来の抗がん剤や放射線治療と組み合わせることで、治癒や長期にわたる病気の安定(寛解)が期待できるケースも増えてきました。
ただし、たとえば悪性リンパ腫だけでも、細かく分けると数十種類以上に分類され、それぞれで治療の方法や予後(病気の見通し)が異なります。白血病や骨髄異形成症候群でも、遺伝子の異常の有無や患者さんの年齢、体の状態などによって、おすすめされる治療が変わってきます。

医学の進歩により、今は「一人ひとりに合った治療」を選ぶ時代になりつつあります。そのため、インターネットなどで調べた情報が、必ずしもご自身の病気に当てはまるとは限りません。
ご自身の病気について正しく理解し、最適な治療を受けるためには、主治医に直接相談することがとても大切です。また、他の専門医の意見を聞く「セカンドオピニオン」を利用することも、納得のいく治療選びにつながります。

血液がんの症状

血液がんは、初めのうちは気づきにくいこともありますが、次のような症状が出ることがあります。

  • なんとなく疲れやすい、息切れがする
  • 熱が続く、風邪が治りにくい
  • あざができやすい、鼻血が出やすい
  • 首やわきの下にしこりがある
  • 骨が痛む、腰が重い感じがする

 

これらの症状があるからといって、必ず血液がんというわけではありませんが、気になることがあれば、早めにご相談ください。

血液がんの診断方法(検査方法)

血液のがんが疑われるとき、まずは血液検査やCTなどの画像検査を行って、体の中の状態を詳しく調べます。

白血病や多発性骨髄腫、骨髄増殖性腫瘍、骨髄異形成症候群といった病気では、「骨髄」という血液をつくる場所の検査が必要になります。骨髄検査では、骨盤のあたりにある「腸骨ちょうこつ」という骨から、細い針を使って骨髄液を少しだけ採取します。

採取した骨髄や血液の細胞は、顕微鏡で詳しく観察するだけでなく、「フローサイトメトリー」という機械を使って細胞の表面にある目印(マーカー)を調べたり、染色体や遺伝子の検査を行ったりして、がん細胞の特徴を詳しく調べます。


骨髄検査の様子

悪性リンパ腫の場合は、首やわきの下、お腹の中などにあるリンパ節や臓器にできた腫れた部分から、組織の一部を採って調べる「生検せいけん」という検査を行います。このときも、白血病と同じように細胞のマーカーや遺伝子の検査を組み合わせて、正確な診断を目指します。

血液のがんは種類が多く、診断が難しいこともあるため、何度か検査を繰り返すこともあります。でも、こうした詳しい検査を行うことで、病気の進み具合や、どの治療が合っているかをしっかり見極めることができ、より適切な治療につながります。

血液がんの治療方法

血液のがんに対する治療は、これまでの抗がん剤や放射線治療でも高い効果が期待できますが、近年ではさらに進んだ治療法が登場しています。

たとえば、がん細胞の遺伝子の異常や、細胞の表面にある特別な目印(抗原)をねらって攻撃する分子標的薬ぶんしひょうてきやく「抗体薬」が使われるようになってきました。これらの薬は、がん細胞をより正確に狙うことができるため、体への負担が少なく、効果的な治療が期待できます。

放射線治療も進化しており、必要な場所にだけピンポイントで照射できるようになり、副作用を抑えながら治療できるようになっています。

また、治りにくい血液のがんに対しては、特に体力のある若い方を中心に、「大量化学療法」造血幹細胞移植ぞうけつかんさいぼういしょく(骨髄移植など)」を組み合わせて、根本的な治療を目指すこともあります。この治療は、強力な抗がん剤などでがん細胞を減らしたあと、健康な血液をつくる「造血幹細胞」を体に戻して、血液をつくる力を回復させます。自分の幹細胞を使う「自家移植」と、ドナーからもらう「同種移植」があり、病気の種類や体の状態に応じて選ばれます。治療後は感染症に注意しながら、血液が回復するのを待ちます。特に免疫力が低下している期間は、感染予防の観点から無菌室(クリーンルーム)での管理が行われることもあります。

無菌室での治療の様子

さらに最近では、CAR-T療法カーティーりょうほうという新しい免疫療法も行われるようになりました。これは、患者さんご自身の免疫細胞(T細胞)を取り出して、がん細胞を攻撃するように遺伝子を組み替えたあと、再び体に戻すという治療法です。とても高度な治療ですが、特定の血液がんに対して大きな効果が期待されており、今後さらに多くの病気に使えるよう研究が進められています。

当院の治療の特徴

当院では、血液がんの治療に経験豊富な医師や看護師、薬剤師、栄養士、心理士などがチームとなって、患者さん一人ひとりに合った治療とケアを行っています。

最新の治療法を取り入れながら、患者さんの生活の質(QOL)を大切にした支援を心がけています。治療だけでなく、退院後の生活やお薬の管理、心のケアまで、安心して過ごしていただけるように、私たちが寄り添います。