肺がん

肺がんについて

肺がんは、肺の細胞が異常を起こしてがん化することで発症する病気です。進行すると、周囲の正常な肺組織を壊しながら増殖し、血液やリンパの流れを通じて他の部位に転移することがあります。

転移しやすい部位は以下の通りで、リンパ節以外に転移をきたした肺がんは、一般に全身に広がった病気とみなされます。

  • 胸部のリンパ節
  • 胸膜
  • 肝臓
  • 副腎
  • 肺内

また、胸の中に無数にがん転移をきたした胸膜播種きょうまくはしゅがん性胸膜炎といった重篤な状態に発展することもあり、無治療のままでは、生命を脅かす病気となります。

肺がんの種類(組織型)

肺がんには「小細胞肺がん」「非小細胞肺がん」などの種類があり、これを「組織型」として分類します。同じ肺がんでも、組織型によって治療方法が大きく異なります。

小細胞肺がん
  • 肺がん全体の約15%
  • 進行が早く、転移しやすい
  • 主な治療法は抗がん剤治療(薬物療法)
非小細胞肺がん
  • 肺がん全体の約85%
  • 比較的進行が緩やかで、手術が主要な治療となることが多い
  • 肺がんの中で最も一般的な腺がんや、その次に多い扁平上皮へんぺいじょうひがんなどを含む

肺がんの症状

肺がんは、早期では症状が現れないことが多く、進行するにつれて症状が出てくるのが一般的です。しかし、肺炎や気管支炎など他の病気と共通する症状が多いため、「この症状=肺がん」と断定することはできません。

また、症状がほとんどないまま進行し、定期健診や他の病気の検査で偶然発見されるケースも少なくありません。つまり、肺がんは「症状がないから安心」とは言えず、逆に「症状があっても気づきにくい」怖い病気でもあります。

主な症状

  • 咳、痰、血痰(血が混じった痰)
  • 胸の痛み
  • 運動後の息切れや動機
  • 発熱
がんが脳や骨に転移した場合には、以下のような症状が現れることもあります
  • 頭痛、めまい
  • 背中や肩の痛み
特に注意が必要な症状
  • 原因不明の咳や痰、あるいは熱が1週間以上続く
  • 血痰が見られる

これらの症状がある方は、早めに医療機関を受診することをおすすめします。

肺がんの診断方法(検査方法)

検診のレントゲンや症状などから肺がんが疑われた場合、診断を確定するために、主に以下の3つの検査が順を追って行われます。

①画像検査 がんの位置や広がりを確認するために、CT、PET-CT、MRIなどの画像検査を行います。
②生検 がんの診断を確定するために、細胞や組織を採取する検査です。気管支鏡きかんしきょう経皮的針生検けいひてきはりせいけん、胸腔鏡のいずれかが、状況に応じて行われます。
③病理検査 生検で採取した細胞や組織を顕微鏡で詳しく観察し、がんであるかどうかの最終判定や、がんの組織型の特定を行います。

①画像検査(MRI検査)

②組織採取(気管支鏡検査)

③病理検査

これらの結果をもとに、がんの広がり(ステージ)や患者さんの状態を把握して治療方針が決定されます。最善の治療を選択するためには、精密な診断が重要であるため、最初の検査から治療開始までに1か月程度かかることも珍しくありません。また、上記の他に、補助的検査として、血液の腫瘍マーカー(CEAなど)があります。

肺がんの治療方法

肺がんの治療は、がんの進行度(ステージ)やタイプ(組織型)によって方針が決定されます。治療の中心となるのは、以下の「3本柱」です。

  • 手術
  • 薬物治療(抗がん剤・分子標的薬・免疫療法)
  • 放射線治療

これらは、状況に応じて単独で行われることもあれば、組み合わせて行われることもあります。ここでは、肺がんの約85%を占める非小細胞肺がんの治療方針について説明します(※小細胞肺がんでは、抗がん剤治療が中心です)。

早期の肺がん(ステージⅠなど)

比較的早期に発見された場合は、手術によるがんの切除が行われます。ただし、がんが完全に切除された場合でも、病理診断によってリンパ節転移が判明するなどして、ステージが修正されることがあります(I期とみられていたが、実はII期やIII期だった等)。

その場合、再発率を下げる目的で、手術後に補助療法(主に薬物治療)が追加されることがあります。

進行した肺がん・切除不能の肺がん

進行した肺がんや、手術による切除が困難と判断された場合には、治療を目的とした手術は行われず、薬物治療や放射線治療が単独あるいは組み合わせて行われます。

薬物療法の進化

かつては抗がん剤による化学療法が主流でしたが、近年では以下のような新しい治療薬が登場しています。

分子標的治療薬 がん細胞の増殖や転移に関わる特定の分子に作用してがんの増殖を阻止する治療薬
免疫チェックポイント阻害剤 患者さんの免疫システムを利用してがんを縮小させる治療薬

これらの薬剤は、がんの性質や遺伝子変異の有無に応じて選択されます。

放射線治療の種類

放射線治療では、主にX線を照射してがんを縮小させます。その他にも以下のような治療法があります。

粒子線治療(陽子線・重粒子線) がん細胞にだけ集中して放射線を当てることができる、精密な治療法
ラジオ波焼灼療法(RFA) 腫瘍に針を刺してラジオ波の熱でがん細胞を加熱・壊死させる治療法

ただし、粒子線治療やRFAは、治療の対象や実施できる施設が限られているのが現状です。

当院の治療の特徴

当院では、患者さんの身体的負担を軽減することを重視し、胸腔鏡下手術や最新のロボット支援手術を積極的に導入しています。

特に、進行がんなど手術単独では治療が難しい症例に対しては、日頃から合同症例検討会を行っている呼吸器内科・外科、放射線治療科・診断科の4科が連携して集学的治療を行うことで、より高い治療効果を目指しています。

また、必要に応じて他の外科系診療科と協力し、拡大手術にも対応しています。


呼吸器外科チームとダビンチSP

ダビンチ5による肺がん手術の様子

ステージI期(早期)肺がんに対する治療

早期肺がんには、肺葉切除術リンパ節郭清を基本とし、一部の小型肺がんには区域切除や肺部分切除などの縮小手術を行っています。これらの手術の約9割は胸腔鏡下で実施されており、近年ではロボット支援手術の割合も急増しています。これにより、術後の回復が早く、入院期間の短縮にもつながっています。

ステージII期以上の肺がんに対する治療

進行肺がんでは、早期肺がんと比べ、胸腔鏡を補助的に使用した開胸手術の割合が高くなります。また、がんが隣接する臓器に及んでいる場合には合併切除(拡大手術)を行うこともあり、手術だけで治療が完結することが少なくなります。

手術前には呼吸器内科による薬物治療(術前化学療法)を行い、完全切除率の向上に努めています。術後は病理診断の結果に応じて、補助療法としての薬物治療を単独または放射線治療と組み合わせて行っています。

転移性腫瘍への対応

大腸がんや乳がんなど、他臓器から肺に転移した転移性肺腫瘍に対しても、原則として早期肺がんと同様の胸腔鏡下手術で対応しています。これにより、低侵襲かつ安全な治療を提供しています。