センターのご紹介
本センターの特色は、日本で初めて大動脈解離にステントグラフト治療を施行した大動脈疾患のパイオニア的存在である心臓血管外科の倉谷徹と末梢血管及び大血管に対して循環器内科で日本一カテーテル治療を行ってきた循環器内科医の飯田修でチームが構成されているところであります。血管疾患は、1) 診断、2) 治療、3) 術後サーベイランス、が極めて重要であります。1)に加え内科的治療の統括は、日本循環器ガイドラインの大動脈疾患 (2020)・末梢動脈疾患 (2022)の内科班長であった飯田が行い、決して独善的ではないbest practiceを患者さんに寄り添い熟考致します。
一方で、治療適応のある血管疾患 (大血管・末梢血管)に対しては、“低侵襲”をキーワードに倉谷を中心とした外科チームが中心となりますが、外科・内科などという古いチーム構成ではなく、このチームメンバーのstrong pointを尊重することで、各患者さんに個別化された最も良い治療をご提供させていただきます。治療後は、術者が一生涯患者さんをfollowすることを前提に致します。その理由としては、血管疾患の患者さんはご高齢な方が多いため、血管疾患以外の問題も出てくるからです。よって、大動脈・血管センターのみならず大阪けいさつ病院が総合病院である点を活かして、各患者さんが血管疾患以外でお困りにならないように最善を尽くさせていただく次第です。
対象疾患
- 大動脈疾患 (急性・慢性大動脈解離、胸部大動脈瘤、胸腹部大動脈瘤、腹部大動脈瘤)
- 末梢動脈疾患(鎖骨下動脈閉塞症、腎動脈狭窄症、腸間膜動脈狭窄症、下肢閉塞性動脈疾患)
- 透析シャント不全 (鎖骨下静脈閉塞含む)
低侵襲大動脈治療
大動脈疾患に対するカテーテル治療(ステントグラフト)
大動脈のあらゆる部位、あらゆる疾患にステントグラフトを使用した「体に優しい低侵襲手術」が可能になりました。
1993年に自作のステントグラフトを用いた大動脈低侵襲治療を始めてから、30年が経ちました。その間3000例を超える患者さんをこの低侵襲治療で治療し、世界にも例を見ない症例数を経験しております。またステントグラフト自体も、企業が製作した安全性、遠隔期成績の優れたデバイスが数多く開発され、いつの間にか大動脈疾患に対する治療の第一選択になってしまいました。30年前には予想もしなかったことです。
しかしながら、ステントグラフト治療が、すべての患者さんの第一選択治療になるわけではありません。ステントグラフト手術術後、毎年CT検査を受ける必要があり、またステントグラフト手術特有のエンドリークという遠隔期成績に影響を及ぼす合併症もあります。このエンドリークは治療が非常に困難です。特にそのエンドリークが起こりやすい腹部大動脈瘤に対して、若い患者さんまで全例にステントグラフト手術を、我々は勧めていません。少し入院が長くなっても、人工血管置換術の方がいい場合もあります。
我々は、手術をする際に患者さんの一生を守ることを一番大事にしています。ですので患者さんが、最も安全に、さらには楽しく人生を送れるように手術方法を選択し、術後も一生フォローアップさせて頂きます。
血管内治療
当院は、患者さんの足病に対して、適切な診療を個別に行う、”Personalized(パーソナライズド) Lifetime(ライフタイム) Management(マネジメント)”を目標に掲げて、足病から命を考えます。
包括的高度慢性下肢虚血とは
(ほうかつてきこうどまんせいかしきょけつ)(CLTI; chronic limb threatening ischemia)
動脈硬化による下肢の虚血(下肢の動脈が細くなり足先に血液の流れが悪くなること)によって引き起こされる安静時の下肢痛や、潰瘍・壊疽が少なくとも2週間以上改善せずに持続する病態です。CLTIは適切な治療を適切なタイミングで行わないと、下肢大切断(膝下か膝上切断)に至る可能性があります。
近年、高齢化、糖尿病、血液透析患者さんの増加などにより、動脈硬化の週末像であるCLTI患者さんは全世界で増加傾向です。CLTIを評価するためには、下肢の虚血に加えて、潰瘍の大きさ、感染の合併の評価が大切とされ、これらが下肢の予後(切断になるか否か)を大きく左右する要因と言われています。
日本の研究において、特に、
① 日頃から歩いていない、車いす生活の患者さん
② 糖尿病患者さん
③ 血液透析治療を受けられている患者さん
が、下肢の前駆症状なく、ある日突然、壊疽や壊死を発症するリスクと報告されています。
これらのリスクをお持ちの患者さんが、足に傷ができた場合には、すぐに専門施設を受診しましょう。
この10年からみる日本のCLTI診療の実態
① 疾病構造の変化/多様化(高齢化・透析患者の増加)臨床的な背景や社会的な環境を考慮しても、治療方針の決定が困難な症例が増加
② 疾患概念の変遷 ASO⇒PAD/CLI⇒LEAD/CLTI疾患名称が変更、現在は、LEAD/CLTI
下肢閉塞性動脈硬化症 | ASO; | arteriosclerosis obliterans |
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末梢動脈疾患 | PAD; | peripheral arterial disease |
重症下肢虚血 | CLI; | critical limb ischemia |
下肢閉塞性動脈疾患 | LEAD; | lower extremity artery disease |
包括的高度慢性下肢虚血 | CLTI; | chronic limb threatening ischemia |
③ 新たな診断アルゴリズムや分類法の登場疾患の複雑性から、各患者さんの評価する
全身(患者さんの併存疾患を加味)
創傷(傷の重症度[大きさ・感染・血流])
血管(詰まっている動脈病変の場所や長さ/石灰有無等)
CLTI診療に関するGlobal Vascular Guidelineにおける病態評価
PLAN概念 | 患者リスク | Patient Risk |
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下肢重症度 | Limb Severity | |
解剖学的複雑さ | ANatomical Complexity | |
3つの角度からCLTIの病態を評価する | ||
WIFI分類 | Wound: | 潰瘍(潰瘍・壊疽の範囲と深さ |
Ischemia: | 虚血(血行動態、末梢灌流) | |
foot Infection: | 足の感染(存在と範囲) | |
GLASS分類 | GlobaL Anatomic Staging Systemの略で、解剖学的な血管病変の複雑性を反映した分類を用いて適切な治療方法を推奨するもの |
④ 生活習慣病に対する管理や、その治療薬の進歩診療ガイドラインに基づく標準的治療(GDMT; guideline-directed medical therapy)の必要性、特に脂質異常症に対するスタチン療法(高脂血症がない人に重要)や抗血栓薬は長期予後を改善に必須
⑤ 治療デバイス進歩血管内治療(EVT; endovascular therapy)による守備範囲の拡大
多くの日本のエビデンスから、外科治療と血管内治療のすみ分けが明確化
⑥ より多くの職種の介入が実現複数の医療従事者が関与することで患者さんの予後を改善することが期待されます。
当院におけるCLTI治療の4本柱
CLTI患者さんのゴールはより良く生きる(well-being)です。そのための治療の4本柱は、次の通りです。
① 内科的治療動脈硬化リスクの管理[血管が細くなる危険因子への介入]と、他の動脈硬化性疾患への治療[CLTI患者さんの死因は下肢ではなく、心臓疾患や感染症]
② 内血行再建術(外科的バイパス術と血管内治療)この治療方針は独善的に決定してはなりません。いずれの治療も、その施設で持ち合わせることで、はじめてBest Practiceと言えます。
③ 創傷加療創傷治療に対しては専門性の高い知識のもと、手厚くそして愛護的に行われるべきです。
④ 歩行機能の維持傷が治癒した後には、創傷の再発をさせないような厳密なフォローアップと歩行機能を維持改善させるための個別目標の設定です。各患者さんの住んでいる環境から、生活のスタイルまで大きく異なりますので、それをよく話し合い、最終的に、個別の目標を立てるべきです。これらの目標を到達するために、当院は、よく患者さんや家族と話し合いBest Practiceを目指します。(Shared decision making [共有意思決定支援])
当院の特色と強み
難易度の特に高いバイパス術(下腿バイパス)施行可能な血管外科医の存在
重度心臓・大血管有した際に、包括的な心血管外科治療が可能な百戦錬磨の心臓外科医 (澤院長 正井副院長 倉谷部長 秦部長)の存在
形成外科部長、日笠医師のもと、豊富な人材を有する形成外科医の存在
腎臓内科部長、水野医師のもと、CLTI治療に理解のある腎臓内科医の存在
治療抵抗性CLTIの原因疾患である自己免疫疾患を専門にする免疫内科医の存在
CLTI診療で重要な外来・手術・病棟看護師、医事課、地域連携室の存在
内科治療と血管内治療を行うゲートキーパーの循環器内科医の存在
CLTI患者さんの人生に寄り添うBest Practiceが可能
治療実績報告
当院大動脈・血管センターにおける手術実績などを掲載しています。
2024年7月(最新)
診察スケジュール・担当医
月 | 火 | 水 | 木 | 金 | |
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午前 | 大賀 | - | - | 倉谷 | - |
午後 | - | - | - | 倉谷 | - |
担当責任者:倉谷センター長
月 | 火 | 水 | 木 | 金 | |
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午前 | 飯田 | 当番制 | 当番制 | 飯田 | 当番制 |
午後 | 飯田 | - | - | - | - |
担当責任者:飯田センター長
担当医師プロフィール
役職 | センター長 |
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氏名 | 倉谷 徹 |
専門分野 | ・動脈(低侵襲治療) ・経カテーテル的大動脈弁置換術 |
学会認定等 | 日本心臓血管外科学会専門医・修練指導者 日本胸部外科学会専門医 日本循環器学会FJCS 日本外科学会専門医 日本血管外科学会評議員 日本心血管インターベンション治療学会 日本経カテーテル心臓弁治療学会理事 EACTS Active Member ASCVS Active Member 日本ステントグラフト実施基準管理委員会胸部ステントグラフト指導医/腹部ステントグラフト指導医 経カテーテル的大動脈弁置換術関連学会協議会経カテーテル的大動脈弁置換術指導医 難病指定医 |
役職 | センター長 |
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氏名 | 飯田 修 |
専門分野 | ・冠動脈インターベンション ・末梢血管インターベンション ・大動脈(胸部・腹部)ステントグラフト ・経カテーテル的大動脈弁留置術 |
学会認定等 | 日本内科学会認定内科医 総合内科専門医・指導医 日本循環器学会 専門医 日本心血管インターベンション治療学会 指導医 腹部大動脈瘤ステントグラフト指導医 胸部大動脈瘤ステンドグラフト指導医 経カテーテル的大動脈弁留置術(TAVR) 指導医 The Fellow of the Japanese College of Cardiology(FJCC) The Fellow of the American College of Cardiology(FACC) 2016-2025年度ベストドクター認定 |
役職 | 医長 |
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氏名 | 湯崎 充(ゆざき みつる) |
専門分野 | 心臓血管外科全般・血管外科 |
学会・資格等 | 日本外科学会外科専門医・指導医 日本心臓血管外科学会専門医・修練指導者 日本胸部外科学会専門医 日本脈管学会専門医・研修指導医 日本血管外科学会認定血管内治療医 浅大腿動脈ステントグラフト実施基準管理委員会浅大腿動脈ステントグラフト実施医 日本ステントグラフト実施基準管理委員会腹部ステントグラフト実施医・指導医 下肢静脈瘤血管内治療実施管理委員会下肢静脈瘤に対する血管内焼灼術の実施基準による実施医・指導医 日本フットケア・足病医学会 日本循環器学会 JET |
役職 | 副医長 |
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氏名 | 安永 元樹 |
専門分野 | 循環器内科全般 |
学会認定等 | 日本内科学会認定医 日本循環器学会専門医 日本心血管インターベンション治療学会認定医 日本心エコー図学会 浅大腿動脈ステントグラフト実施基準管理委員会浅大腿動脈ステントグラフト実施医 Japan Endovascular Treatment Conference リードレスペースメーカー植込み資格 エキシマレーザー心内リード抜去資格 Evolution(非レーザー)心内リード抜去資格 皮下植込み型除細動器(S-ICD)植込み資格 |
役職 | 副医長 |
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氏名 | 大賀 勇輝 |
専門分野 | 心臓血管外科全般 |
学会認定等 | 日本外科学会専門医 日本血管外科学会 日本心臓血管外科学会 日本胸部外科学会 |
役職 | 副医長 |
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氏名 | 豊島 拓 |
専門分野 | ・冠動脈インターベンション ・末梢動脈インターベンション ・SHDインターベンション ・大動脈(胸部・腹部)ステントグラフト |
学会認定等 | 日本内科学会専門医 日本循環器学会 日本心血管インターベンション治療学会認定医 日本心エコー図学会 日本脈管学会 Japan Endovascular Treatment Conference (JET) 日本ステントグラフト実施基準管理委員会 腹部大動脈ステントグラフト実施医 日本ステントグラフト実施基準管理委員会 胸部大動脈ステントグラフト実施医 |
役職 | 医員 |
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氏名 | 中西 靖佳(なかにし やすか) |
専門分野 | 心臓血管外科一般 |
学会・資格等 | 日本外科学会専門医 日本脈管学会専門医 日本ステントグラフト実施基準管理委員会腹部ステントグラフト実施医 下肢静脈瘤血管内治療実施管理委員会下肢静脈瘤に対する血管内焼灼術の実施基準による実施医 |
役職 | 医員 |
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氏名 | 吉井 大智(よしい だいち) |
専門分野 | 循環器疾患全般 |
学会・資格等 | 日本内科学会専門医 日本循環器学会 日本心血管インターベンション治療学会認定医 日本心エコー図学会 |