前立腺がんについて
前立腺は男性だけにある臓器で、膀胱のすぐ下に位置し、尿道がその中を通っています。前立腺がんは、この前立腺の細胞が異常に増殖することによって発生するがんです。多くの場合は非常にゆっくり進行し、早い段階で見つかれば治癒することも可能ながんです。
![]() 前立腺の位置 |
前立腺がんの症状
初期の前立腺がんでは、ほとんどの場合、自覚症状はありません。しかし、以下のような症状から見つかることもあります。
- 尿が出にくい
- トイレの回数が増える
- 夜間頻尿
また、進行すると、血尿が出たり、骨にがんが転移し、痛みが出ることもあります。
前立腺がんの診断方法(検査方法)
まず、血液検査で前立腺がんのときに上がる血液の数値(腫瘍マーカー)であるPSA(前立腺特異抗原)を測定します。PSAが正常より高い場合には、前立腺がんの可能性がありますので、その次に前立腺のMRI検査を行います。MRIにて前立腺がんが疑われるところがあった場合は、前立腺生検が必要になります。
![]() 診断の流れ |
前立腺生検について(1泊2日の入院)
◆1日目
入院し、午後から前立腺生検を行います。
腰から麻酔をして、肛門の上から針をついて前立腺の組織をとり(14~16か所)、顕微鏡の検査に提出します。検査後は、血尿が出たり、尿が出にくくなることがあります。
◆2日目
問題がなければ午前中に退院します。
前立腺生検で前立腺がんと診断がついた場合は、CT、骨シンチグラフィーなどの検査を行って転移がないかを調べ、病期(ステージング)を決定します。
病期(ステージング)分類
| ステージA・B:前立腺限局がん | がんが前立腺内にとどまっている状態 |
|---|---|
| ステージC:局所進行がん | がんが前立腺の外に広がっているが、前立腺の周囲にとどまっている状態 |
| ステージD:進行がん | がんが前立腺の周囲の臓器に広がっている、あるいは転移している状態 |
前立腺がんの治療方法
前立腺がんの治療には、手術、放射線治療、薬による治療(ホルモン療法、化学療法)、監視療法などがあります。各病期によって選択できる治療法がありますので、患者さんの年齢、体の状態、希望、それぞれの治療の副作用などを考えて主治医の先生と一緒にどの治療にするか決定してください。
手術(ロボット支援下前立腺全摘除術)
適応:ステージA~C
前立腺を完全に取り除く手術です。
当院では、ほとんどの手術をダビンチXiもしくはSPというロボットを使った手術を行っています。従来の手術方法(開腹手術、腹腔鏡手術)に比べてより細やかな手術ができますので、手術後の尿失禁の回復が改善しています。
手術前日に入院し、入院期間は約10日間です。
放射線治療
適応:ステージA~C
体の外から前立腺に放射線を当てて、がん細胞を死滅させる治療です。
外来通院で行い、治療期間は1か月程度です。
ホルモン療法
適応:ステージA~D
前立腺がんは男性ホルモンの働きで進行します。薬によって男性ホルモンの働きを抑えて、前立腺がんを抑え込む治療です。
当院の治療の特徴
当院では、従来のロボット手術機器ダビンチXiに加え、2025年1月からダビンチSP(シングルポート)を導入しました。これにより、緑内障がある患者さん、腹部の手術歴のある患者さんに対する手術もこれまでより容易にできるようになっています。
ダビンチSPは、1つの小さな切開口から手術器具を挿入できるため、体への負担が少なく、術後の痛みや回復期間の短縮が期待されます。
![]() 手術支援ロボットダビンチSP |
![]() ダビンチSP鉗子部分 |
また、より精密な操作が可能なため、神経や血管を傷つけるリスクが低く、術後の排尿機能や性機能の温存にもつながります。
当院では、患者さん一人ひとりの状態に合わせて、最適な手術方法を選択しています。



